成長戦略としての人口政策・少子化対応への提言




提 言 内 容

現在の我が国は少子高齢化による労働力不足から、新型コロナウイルス感染症により一変し、医療崩壊や大規模な活動自粛が懸念され日本経済を停滞させ見通しのつかない状況に陥っています。国家経済を発展させ社会インフラの維持をしていくため、また社会保障制度を持続可能なものとし、消費マーケットの確保するためには、国家戦略としての投資は必要不可欠です。一方で、我が国の国家の維持という点では人口は密接に関係しており、社会的情勢に影響を受けることなく安定した経済とするためには、人口を福祉政策の一環で捉えるのではなく、社会に対する投資という観点で少子化対策を立案し成長戦略に盛り込んでいく必要があります。

また、日本青年会議所では、青年会議所会員のうちJCCS(JCアンケートシステム)に登録している中小企業会員2万1579名にアンケートを実施し、会員企業における育児休業への取り組みや中小企業経営者の考え方をまとめ、公益社団法人日本青年会議所として、子供を産み育てやすい社会を実現し、人口の安定化を図り「日本の成長戦略」の要としての人口政策を実現するため、以下の通り、提言を致します。


〈提 言 骨 子〉

提言① 子育て世帯への優遇政策の実現

提言② 非正規雇用者および中小企業で働く人材の支援体制および環境整備

提言③ 必要な情報提供と社会インフラの構築

提言④ 少子化政策に若年層の声を反映する仕組みの提案


〈提 言 理 由〉

提言① 子育て世帯への優遇政策実現

1. 子育て世帯における減税措置など優遇政策の実施

子供を第2子、第3子と産み育てている世帯に対する税負担の軽減を行うため、段階的な多子加算による所得税などの減税を行います。主に、第2子から所得税、住民税の50%減、第3子より所得税を全額控除します。また、所得制限は行わず、全ての人が平等に税負担の軽減を受けられ、子供を産み育てることへの経済的負担を解消して、消費行動への意欲を高めます。児童手当の使い道で一番多いのが「貯金」でしたが、税制優遇が必ず経済的循環に貢献するために、マイナンバーを利用して控除された分の金額の使用を管理します。年間控除された金額の80%以上を使用していない場合は、控除した金額の返還をしてもらいます。また、生活費・保育費・教育費など子供の数に比例して支出が大きくなる費用のほか、多子世帯が強いられる費用負担には世帯人数に応じた自動車や居住環境等の高額支出もあります。若者が希望の子供数をもてる社会を実現するために、上記の税制優遇に加え、出生時における出産育児一時金のほかに別途給付金を創設するなど、多子世帯における段階的な高額支出に対する補助金の充実を図る経済支援政策を実施していただくことをお願い致します。


2. 不妊治療および出産に関わる費用の無償化

第1子以降の不妊治療および出産に関わる全ての費用の無償化の実現をお願い致します。


3. 高等学校の義務教育化および教育の完全無償化の実現

2019年10月より幼児教育、2020年4月より高等教育の一部への無償化がスタートしました。子育て世帯においては、一定の負担軽減が実施されましたが、給付型奨学金などは活用が進まず、高等教育においては誰もが平等に大学などにアクセスできる環境が整っているとは言えません。一方で、諸外国においては、国が一時的に大学の学費を立て替え、学生が社会人となった後にその所得に応じて返済する制度(オーストラリアで実際に運用されている「Higher Education Loan Program(通称「HELP」)」などが存在し負担軽減と、平等な機会の提供を実現しています。我が国においても、高等学校までを義務教育とし、また大学等の教育の完全無償化を実現することで子育てに対する負担を大幅に軽減し、将来に希望を持てる環境を早期に実現していただくようお願い致します。


4. 若者の所得向上のための国家資格取得に対する補助制度の創設

日本では未婚化や晩婚化が進行しており、少子化の大きな要因となっています。結婚・出産を望む若者が大多数いるにも関わらず、未婚化・晩婚化が進行している背景には若者の経済的負担の大きさが指摘されており、20代男性の実質賃金が減少傾向にあり、男女の賃金格差が縮小傾向である中、結婚に経済的リスクを感じる若者がいます。そこで低所得の若者や非正規社員を余儀なくされている方への支援策として、国家資格の取得を促し資格取得後において受験費用の返還や奨学金などの免除制度を創設し、成長産業への雇用移行を促進し高所得若年層の創出をするために検討をお願い致します。

◆上記の政策は一時的な財政負担を伴いますが、子供が成人後には租税や社会保険料の負担の新たな担い手になるという意味で、長期的にみれば財政的にはむしろプラスになる政策であると言えます。


提言② 非正規雇用者および中小企業で働く人材の支援体制および環境整備

労働力調査(総務省)によれば20歳〜40歳の労働者の3割弱が非正規雇用となっています。また、労働者の8割が中小企業で働いています。しかし、JCCSによると、非正規雇用者に対する育児支援を行なっている企

業は19%しかありません。また、社員数が50人以下の企業が80%を占める中で、社員における女性正社員の割合は30%が最も多く、女性正社員がゼロという会社も9%もあります。また、40歳未満の女性正社員の割合では、10%未満が最多であり、中小企業の現状としては、若い女性は正社員として積極的に活用されていないと言えます。また女性社員が妊娠出産したケースでは、47%が復職をしますが、退職も25%もあり、中小企業の出産に対する環境は厳しいものとなっています。その主な要因としては、日頃の業務に追われて、知識・情報が足りていないと共に、経費の確保ができないことが挙げられています。また、非正規雇用者および中小企業で働く子育て世代の女性人材が、安心して働ける環境を整備することが急務です。特に、制度を強制することによって、非正規雇用者の雇用環境がかえって悪化したり、中小企業が若い女性の採用を忌避することがないように、公的な支援は不可欠です。公的保育の推進や、中小企業における各種子育て制度の整備推進、働き方改革など労働者の働きやすい環境を作ることが必要です。また、子供を産み育てる女性でも、キャリアを諦めることなく働ける環境を整備することで、出産育児への阻害要因を排除することが必要となります。以上の結果より、子供を産み育てやすい社会の実現へ向けて非正規雇用者および中小企業で働く人材に対する子育て支援を行っていく必要があります。そのため、次の施策の実施を求めます。


1.育児休業の取得に対する雇用保険の給付金の増額と延長

JCCSにおいて、57%が「男性の育児休業を取り入れてみたい」と回答を得たが、男性の育児休業取得率が6%と低迷しています。(女性の取得率は80%)その背景には休業期間中の所得補償である雇用保険の給付金の金額が起因し、一家の収入源としての要素が強い男性の収入が減少することが影響していると考えられます。現状、育児休業取得期間中の給付額は、雇用保険から育児休業給付金67%となっており、産後180日以降は50%に減額される。実質的に育休前の手取り月収とほぼ同額の80%支給とし、また受給期間を現行の1年(場合によって2年)から幼稚園・保育園への入園までに延長することで取得率の向上となるので制度の実現をお願い致します。


2.ワークライフバランスを推進する企業への補助金・助成金の拡大

JCCSにおいて、95%が「男性も育児休業制度を取得することができることを知っている」と回答を得たが、助成金制度の存在を知っていたものは20%であり、「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)」の認知度が低いことがわかりました。利用実績のある方へのヒアリングでは「利用促進の後押しになった」という回答を得ていることから子育て環境の整備には有用な制度であることは間違いない。しかし、企業にとっては代替要員の確保や制度整備などの負担が生じることから、助成金制度は必要不可欠であり、取得促進の観点から、2人目以降の助成額が減額となる制度を年間5人までは同額とする支援策の拡充をお願い致します。

厚生労働省 両立支援等助成金 https://www.mhlw.go.jp/content/000526013.pdf


提言③ 必要な情報提供と社会インフラの構築

加齢とともに、生殖機能が低下していくことについて、日本では間違った認識をしている女性が多くいます。「生理がある間は子供が産まれる」と考えている女性がイギリスやフランスでは1割未満であるのに対して、日本では実に8割を超えているとされています。男性も高齢になるほど不妊の原因になるとともに、妊娠率は22歳をピークに低下していきます。国立社会保障・人口問題研究所の調べでも、24歳までに結婚した夫婦から、二人以上の子供を

出産しているという統計も採られています。また、青年会議所主催の「国民討議会」でも、子育て中の母親や20代の独身女性からの意見として「性教育の改善」と「ライフプランを教える教育」が求められていました。学生に対して、出産に関する正しい知識を伝えていくことにより、欲しい子供の数を持つための人生設計が行え、晩婚化の改善や高齢出産数の減少、不妊治療費の補助金の削減に繋がります。


1. 高等学校における妊娠・出産に関する医学的・科学的な情報提供

晩産化が進行し、肉体的・精神的な負担を要因に希望の子供数をもつことができない夫婦が存在します。妊娠・出産には医学的・科学的なエビデンスに基づいた適齢期が男女共に存在するにも関わらず、多くの若者はその事実を知らずにライフデザインを設計し晩産化が進行し、妊娠・出産に多大な肉体的・精神的・経済的な負担を強いられている現状があります。そこで義務教育の課程において妊娠・出産に関する医学的・科学的な情報の提供を実施するとともに、人工妊娠中絶、不妊治療の実態などもオープンにして理解を促していく必要があると考えますので検討をお願い致します。


2. 企業における結婚・出産・子育てにおけるライフデザイン研修の義務化

男女共同参画の観点から女性の社会進出が推進され、多くの方が活躍し子育てとキャリアアップの両立を目指す女性が増加しています。一方で、医学的な知見では出産適齢期は20代とされおり、これまでの統計から自然なタイミングで2人の子供をもつには27歳、3人の子供をもつには25歳には妊活をはじめることが必要だといわれております。自身のキャリアと出産のライフデザインには、個人でのコントロールできる範囲は限られており、女性が20代で妊娠・出産を経験しながらもキャリアアップを実現するために企業の理解と支援は必要不可欠であります。よって、企業におけるキャリア形成の構築において、子育てとキャリアアップを両立するライフデザインを考える研修を義務化することを提案していただきますようお願い致します。


3. 産婦人科検診の定期受診の無償化および不妊治療の保険適用

結婚・出産を望む若者が大多数いるにも関わらず、結婚して夫婦が妊活をはじめた際にすでに妊孕性が低下をする年齢にさしかかっていることが少なくありません。また近年では乱れた食生活等の理由で、がんや生活習慣病が増加傾向となっており、男性においては加齢や生活習慣病から精子の老化や低下するケース、女性においては妊娠・出産適齢期において乳がん、子宮がんが発症するケースがあります。多くの若者が理想の子供数を持てるように男性・女性に関わらず若い世代から無償で産婦人科検診の定期受診ができる政策を実現していただくようお願い致します。また、不妊治療においては、高額の治療費を要するケースがあり、費用によって断念する方もいます。しかしながら、人口を維持していく点において他に変えることはできないことであり、治療においては医療保険の適用にしていただくことをお願い致します。


提言④ 少子化政策に若年層の声を反映する仕組みの提案

(公社)日本青年会議所では、2019年にかけて、47都道府県にて、今、子供を産み育てている世代、これから産み育てていく世代を対象として「国民討議会」の開催をいたしました。この取り組みによって、多

くの若者世代が少子化に関心があり危機感を持っていること、そして何よりも多くの意見を持っていることが分かりました。少子化については、政府によってこれまで様々な議論がなされ、政策立案がされてきましたが、未だ少子化の改善には至っておりません。これは現実と政策の間に乖離があること、そして何よりも時代に即した政策立案がされていないことが原因であると言わざるを得ません。少子化に関する政策は、若者世代にとって、結婚、出産、子育てという自身に直接的に関わる問題であり、自身の生活に大きな影響を与えるものです。国民討議会のアンケートにおいても、「次回も国民討議会に参加したいと思いますか」という設問に、91%の方が「参加したい」という回答があったことからも、これからの政策立案においては、有識者の意見を聴取することは当然のこととして、若者世代の声を直接反映することが必要不可欠であります。

◆2020年度においては、少子化対策のためにLINEアプリを開発し若年世代の声を集約する取り組みを実施しており、若年層の声を反映できる仕組みづくりに引き続き取り組んでいます。


成長戦略としての人口政策・少子化対応への提言

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